第四話 2014.02.18

たらふく!

カテゴリ 食べる

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「鍋がおいしい~」

能登島でこの時期、鍋と言えば鱈鍋です。今よりも降雪量が多く寒かった50年程前は鱈がたくさん獲れ、ふんだんに食べていました。現在と違い各家庭に車が無い時代です、漁場がある東部地区からは舟で港まで運び、向田(こうだ)の漁港からは雪道の上を引きずって自宅まで鱈を持ち帰りました。鱈鍋には身だけでなくザン(骨・僅かに身が付いている)や頭、内蔵(白子やフトウ(胃袋)にカゲ(エラ))などが入ります。捨てるところがありません。漁師さん達はキモ(肝臓)を好んで入れています。「これ入れなんだら鱈鍋じゃない!」と言う程です。雪が降る寒い日は鱈鍋がより美味しく味わえます。

「オスとメス」

オスの鱈には白子、メスの鱈には真子。生食できる白子が入っているオスの方がメスより高値です。お刺身もオスの身を使います。昆布締めにした身を炒り煮した真子にまぶして「鱈の子付け」にします。こどもの頃から食べていたので冬には「鱈の子付け」のお刺身が当たり前だと思っていましたがよそでは鱈のお刺身を食べないそうです。白子や真子が抜けてしまった鱈をゴンボ鱈とよんでいます。お腹の膨らみがなくなり細くなってしまった態をごぼうに見立てたのでしょうね。ゴンボ鱈も美味しくいただけます。開いた鱈を塩水に漬け、その後軒下に吊るして干し「干ダラ」にします。半干しの干ダラは焼いて(炙って)食べます。塩分きつめの干ダラの身を切ってお椀に入れ熱々のお湯を注ぎ即席の吸い物としても食べました。カンカンに干した干ダラは炙った後に新聞紙などで包み金槌で叩きます。身がほぐれて食べやすくなるのですが歯の隙間に挟まってしまうのが難点でした。

「鱈尽くし」

2月11日は起舟祭です。海が荒れる冬の間、浜に引き上げて伏せてあった舟を起こして海に浮かべ、その年の大漁と安全を祈願する舟祝いの日です。網元の家に集まった漁師さん達は輪島塗のお膳に並んだ鱈尽くしのお料理や、お酒でもてなしを受けました。白子の酢の物・紅白子なます・子付けのお刺身・煮魚・塩焼き・真子の醤油漬け・真子の昆布巻き・身から作った桜でんぶを飾った押し寿司・味付けして炊いた真子をのせた雑煮・鱈汁・等など・・・・・能登島の食文化を先人達にお聞きし後世に伝えるのが私達世代の使命だと思っています。



書いた人

島宿せがわ

能登島で生まれ育ったとーちゃんと息子。かーちゃんも実家より能登島での暮らしが長くなりました。民宿は平成元年に始めました。息子で二代目です。(只今、お嫁さん募集中) たくさんの人々に会える事、お話し出来る事が楽しみです。